病院の帰り、すっかり暗くなってしまった道を私たちは歩いた。
そして、雨の話をした。
…私が、雨が嫌いなこと、その理由。
暗いから、お互いの表情は見えない。
だからこそ、空気に神経を研ぎ澄ませる。
元輝は黙っていた。
だけど、黙って聞いてくれていた。
―――そんな貴方だから話せたんだ。
―――水の、音……
またその音で目を覚ます。
窓の外を見やれば、やっぱり、と言葉がこぼれた。
久しぶりの、雨。
だけどそれはあの時の激しいものではなくて、どこか優しい雨だった。
ポツポツと聞こえる音色は雨垂れだ。
少し楽になった身体を起こしていつも通りの支度。
おばあちゃんのいない朝は、用意する物が少なくて楽。だけど寂しい。
放課後、私はまた日直として元輝と残っていた。
あぁ、もうあれから半月以上も経ったんだな、と心の中で呟いた。
だけど、その時とは違う…と、私は思うの。
「確かになー。」
「でしょ?私たち、仲良くなったよね、絶対あの時よりは!」
「…あの時はびびった。いきなり変なこと聞いてくる人がいるもんなー。」
「きっとね、こうなること、わかっていたのよ私。」
「こーなること?」
「元輝はこういうヤツで、仲良くなれるってこと。」
「…予言者かよお前。」
「女の勘ってヤツよ。」
「ははは」
「あーっ今鼻で笑ったな!」
…わかっていたから、あの時話せたのかな。
そうだったとしたら、話してよかったって、心から思う。
「終わった終わった。さ、帰りますか。」
「あ〜………送る。」
「え、いいわよ。別にそんなに暗くないし、子供じゃあるまいし怖くないって!」
「…や、そうじゃなくて。」
「なに。」
「………雨、だろ。」
そう言うなり元輝は私に背を向けて歩き出してしまった。
…素直じゃない。だけど、嬉しい。
「ふふ。」
「………なに笑ってんだよ……」
「いやぁ、別に?ふふ…。」
「だ〜〜っ!ほら、早く行くぞ!」
「…………うん……。」
ありがとう。ありがとうありがとうありがとう。
ねぇ、何度言っても足りないよ。
だけど、雨の日も悪くないな、なんて思えたのも
きっと貴方のおかげ。
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