俺の嘘を嘘だとわかって優しく受け止めてくれる
 きっとその優しさがすきなんだ。








 
 
 
Rain.-10-










ゲーセンではっちゃけた時の心は、心底楽しそうな表情をしていた。
自然と、俺も笑みがこぼれた。
思う存分遊んで、「楽しかったぁ」と心は言ってくれた。
それを見て俺は安心して心から見えないように安堵の息をついた。
そしてお互いの財布の経済状況が危なくなったのを見て顔を見合わせて笑いあったりもした。

そんな瞬間も、大切だと思えたんだ。

「おまえ、この後どーすんの。」
「んーそうだなぁ、おばあちゃんとこ、一応見に行こうかな。」
「…まだ、意識」
「うん、戻ってないみたいねー。」

…みたいねって。
そんな軽々しく言っちゃっていいもんなんだろうか。
…強がってんのな。

「じゃ、俺も行く。一応、心配だし。」
「え。いいよう、別に。結構遅くなっちゃったし、帰りなよ。」
「いや、行く。」
「…でも」
「いいって、行く。」
「……うん…。」

なんで、俺こんな意地になってんだろうな、そう思ったけれど
彼女が小さくつぶやいた「ありがと」という言葉で、全てがどうでもよくなってしまったような
これで良かったんだって、自然と思えてしまったんだ。











「…………おばあちゃん!?」
「あら、心ちゃんいらっしゃい。」

病室に入った俺たちを待っていたのは、身体を起こしベットに座っている心のばーさんだった。
…意識、戻ってないんじゃあなかったか?
唖然としている俺たちの後ろから、看護婦が声をかけた。

「…あ、菊池さん!ちょうど今家に電話したのよ。
 出なかったから…ちょうどこっちに向かっていたのね。」
「あ、はい。すみません…。」
「いいのよ、気にしないで。文子さんね、さっき意識が戻ったのよ。」
「…そうですか、ありがとうございます!」
「じゃぁ文子さん、点滴変えますねー。」


そんなやりとりが、俺の前でくり広げられた。
ただ、心の表情は本当に安心しきった表情で、それを見て俺も安心してた。



お花の水変えてくるね。心はそう言って病室を後にした。
心のばーさん…文子さんと二人きりになってしまったこの部屋は、白い壁や床に、
優しいグリーンのカーテンがやけにしっくりきていて、とても落ち着きのある部屋だった。


「ええと…あなた、は…?」
「あ、挨拶遅れてすみません。心…さんのクラスメイトの、数井です。」
「…そう、心ちゃんのお友達なのね。」
「えぇ、まぁ…。」

少し、声も弱弱しく感じられる。しかし、瞳は真っ直ぐ俺を見据えていた。

「…これからも、心ちゃんと仲良くしてちょうだいね。」

「……はい、もちろん。」

優しい声で、優しい顔でそう言われた。
だけどそれはどこか寂しそうで、返答に少しためらってしまった。


そしてたわいのない話をして、鼻歌なんて歌っている心を二人で出迎えた。












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