次の日、私はいつもどおり学校へ向かった。
本当はずっと病院にいて、おばあちゃんを看病していたかったけれど
看病できる状態じゃないこともわかっていたし、
そんな必要もないとお医者様に言われてしまったのだ。
だから仕方なく、私は支度をして家を出た。
少し歩いたところで、数井に出会った。
「……あれ?数井?」
「あ、菊池だ。」
「心、でいい。あんまし好きじゃないんだよね、菊池って苗字。」
「おう。じゃぁ俺も数井じゃなくていい。元輝のが、俺も苗字ってあんま好きじゃねーな。」
「うん、じゃぁ元輝ね!なんか名前で呼ぶとさ、仲良くなった気分じゃない?」
「確かになー。呼び名ごときで友情はかられちゃたまんねぇけどな。」
「それはいえてるー。」
これは前から思っていたことなんだけど、数井…じゃあなくて、
元輝と話してると、なんだか落ち着くんだ。
少しぶっきらぼうな印象だけど、しっかり話を聞いてくれる。
…だから、なんでも話してしまえるのだろうか。
「ていうかあれ?元輝いつもこんな道通ってたっけ?会ったことない。」
「…あー…、今日なんか早く起きちまって、時間に余裕があるから気分転換に別の道を…。」
「気分転換…かぁー。なんかこー…ぱーっとすることやりたいよね、うん。」
「ぱーっとねぇ…。」
だってぐちゃぐちゃなんだ。
おばあちゃんが倒れたなんて、全く予想してなかったわけじゃないけれど
できれば考えたくなくて、考えないようにしていたことで
なのにそれが起こっちゃって、凄く怖い。怖い―――。
でも私の心がめちゃくちゃになる前に、貴方が来てくれたこと、
だから平気でいられたのかもしれない……なんて。
「心」
普段どおりに過ぎていった授業も終わり、帰りの準備をしている私に元輝が声をかける。
「なあに?」
「お前、帰りなんか用事あるか?」
「んーん、ない。」
「んじゃゲーセンにでも寄りますか、パーッとね。」
「…うん!!」
―――ねぇ、きっと貴方のおかげよ。
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