俺の前では、無理に笑わないで欲しいなんて、我儘だろうか。

 “本当”を見せて欲しいんだ。






 
 
 
Rain.-8-









ひとまず彼女と俺は病院を出た。
荷物を届けなきゃいけないから―――いったん家に戻るんだ。そう言って。

さすがにいつもの作り笑顔も今日は完璧じゃあない。
無理もないと思うけど。

「それにしても、なんで此処ってわかったの?何が、あったかまでも。」
「先生に聞いた。そしたら誰にも言うなよって、教えてくれた。」
「あはは、結局先生言っちゃってるんだからダメじゃん。口軽いんだから、先生ってば。」


それでも、おまえは
無理して笑おうとするのな。


「ていうか荷物持ちっぱじゃん。まさか学校から直で来たの?あんた。」
「…お、おう。」
「制服で病院、恥ずかしくなかったー?あ、私も制服だからおんなじか、あははっ。」
でも、全然気にならなかったや…と俺に聞こえるか聞こえないかの声で言う。



…なぁ、なんでそんな明るく振舞おうとするんだ、こんな時まで。
ばーちゃんが、倒れたって。あの様子から見て危ないって俺でもわかった。
絶対に精神的にヤバイはずだろう。ぐちゃぐちゃでどうしたらいいかわかんねぇんだろ?
なのになんでそれを隠すんだよ。
一人で溜め込もうとするなよ。





「あっ黒猫!黒猫見たら“ごめんなさい”って3回言わなきゃ不幸が来るんだよ!
 ほら数井も言わなきゃ!ほらほら!」





なぁ、もう



そんな風に笑うなよ








だけどそんなこと言えなくて、いや、言える権利なんか俺にはないような気がして
結局何も変わらないまま彼女は家に着いて、そこで別れてしまった。


「何しに来たんだろーな、俺…。」

もちろん、彼女の様子が心配だったから、だが。
祖母と二人暮らし、ということは噂で聞いていた。
両親を幼い頃に亡くしたことも、彼女から聞いて知っていて
だからヤバイと思ったんだ。
だけど行ってみればアイツはいつもの調子で。
心の中では不安でいっぱいって顔してるクセして。


結局俺は、無理をさせてしまったんじゃないか。











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