最初からこのことがわかっていたんだね。
 だから、だから買い物へ行こうなんて誘ったのかな。
 じゃぁ買い物になんて行かなくて良かったから
 元気でいてくれれば、それだけで良かったんだから





 
 
 
Rain.-7-









病室は静かだった。
ただ、命の音を示す機械音だけが、小さくしかし大きく響いていた。


意識不明―――心臓は動いているのに、目を覚まさない。
家で、倒れていたそうだ。
たまたま用事があって、家に寄った近所のおばさんが、呼び鈴を鳴らしても返事がなくて
でも窓からカーテンが揺れているのと、電気がついているのが見え、様子がおかしいと
中を覗いて見たら、リビングで倒れていたそうだ。
そのまま救急車で運ばれ、今に至る。



「おばあちゃん……。」

おそろいで買ったペンダントを握り締めて呼びかけた。
学校へも、校則違反だとは知っていながら、今日もつけて行ったのだ。

「…だって、嬉しかったんだよ?私も。」

おばあちゃんと買い物に行けたことが。
おばあちゃんとおそろいの物を持てたことが。




たった一人の家族との、大切な大切な時間―――――。




そう囁いても、心の中で呼びかけても、目の前の彼女はぴくりともしない。
ただ、機械音だけが静かに響くだけ。

おばあちゃんの命を刻むように




お願い、お願いです神様
どうか、おばあちゃんを助けて―――――。
今更、神様を信じるなんて、って思うかもしれない。
だけど
都合の良いときだけ信じるって、みんなそうでしょう?

手を合わせて、私は祈った。



神様を、信じてみようって、思ったの。





――ちらと思った。
おばあちゃんは急に買い物に行こうと言い出した。
…それは何故?








ガラッ
静かにドアが開いた。
自然と私の視線もドアへと向かう。

「……数、井…?」

なんで、と思った。何故彼が此処にいるのか。

「…ごめん。俺こんな所来ていいやつとは思ってねーんだけど、なんか気になって。」

なんだろう、少し、楽になった。
きっと心の奥でこう思ったんだろう。

――――あぁ、私を心配してくれる人が







いるのね?







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