毎年毎年同じ日に、俺の家の近くのふみきりのそばに
 花を供えている子がいるんだ。
 どこの誰か、なんて気にもとめていなかったけれど、
 いつもその悲しそうな後ろ姿を、なんとなく遠くから眺めていたんだ。


 
 
 
Rain.-2-


 



気づいたのは去年だった。
その子は俺と同じ高校で、隣のクラスだと言うことを。
なんとなく気になって、この1年はまた別の場所から、
彼女のことを目で追っていたような気がする。

――恋とかじゃなくて。
気になっていたんだ。
初めの方はあまり気にしなかったけれど、毎回毎回、後ろ姿がどこか頼りなくて
悲しそうで、寂しそうで。
何でなのか。
その理由とか、知りたくて、なんでか近づきたくて


だから、今年クラスが同じになって隣の席になれたのは、
きっと運命だったのかもしれない。


― 菊池 心 ―
その名前を、しっかりと知ったのも、このときが初めてだった。


だけど、そこで知り合った彼女は、
俺が今まで見てきたその後ろ姿からはとても想像できないような子だった。
明るくて、素直で、純粋で、よく喋って、楽しくて
運動もできて勉強もできて
時々見せるとびっきりの笑顔がすごくまぶしくて、
なんていうか、一言で言っちゃえば可愛い子。
初めは想像とのあまりのギャップにびっくりしたけれど、今では普通に喋ってる。




―――2ヶ月経った今でも、俺はあのことは何も聞けていない。
彼女に、そのことでは触れてはいけないような気がしたんだ。
そんな雰囲気だった。
軽く考えて遠くから見ていれば、本当に普通に明るい子なんだけど
―――何か違うんだ。
最近になってよくそう思うようになったんだけど
そのまぶしいくらいの笑顔が

……本心じゃないような気がする。
すごく上手い、作り笑顔な気がしてならない。

その明るさの裏に何を隠しているのか、なんて
俺にはまだ、聞く勇気なんかなかった。






…ただ、その頃から彼女が
俺の心に住み着いたっていうことは、確かに分かる事だ。







「ねぇ、神様って信じる?」






------------------------------------------------